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創刊号・暮しの手帖の「あとがき」がすごくいい


暮しの手帖第一号復刻版のあとがき

 暮しの手帖第一号の「あとがき」です。 70年あまり続いている雑誌の、一番初めに世に出た時の「あとがき」です。

 ひとことで言うと、実に「素朴」なのです。そう、「素朴」。思いが裸のままに出ています。装飾も、誇張も、狡猾さも、計算高さも何にもない。

 一度、読んでみてください。

 雑誌は、創ってから、売ります。「創る」は、つまりアイデアや企画や伝えたい気持ちの動詞形。今の雑誌のように、売りたいがあって、創るがある、のとは少し違います。

 2ブロック目、実に「素朴な」書きっぷり。「私たちは貧乏ですから、売れないと困りますけれど、」。「それどころか、何十万も、何百万も売れたらどんなにうれしいだろうと思いますけれど」。思わず、ほほ笑んでしまいますね。「私たちの、したくないこと、いやなことをしなければならないのです。」

 時代が違うからだよ、とどこかの戦略家や評論家が言いそうです。でも、もう僕たちはそんな声にだまされないぞと思うのです。なんでもかんでも、時代のせいにして,日本人は生きてきました。でも、いいものはいい、となぜ素直に言えないのでしょうか。いいものは、時代なんて無意味にさえしてしまう。戦略や評論なんてものも、簡単にすっ飛ばしてしまいます。

 創る、ことはきっと、素朴なこと。心のなかにやりたいことが、ふつふつと生まれて来て、それが人の心のなかにしっかりと伝わっていって、深く刻まれて残ってゆく。

創る側の素朴と、受け取る側の素朴が共感して、絆が結ばれる。

 一見頭のいいようなことやモノや人に、僕らは動かされる必要はありません。真実は素朴のなかにあるのです。価値観はそろそろ、ぐるっと一巡するのではないでしょうか。

 明日から、素朴に生きよう。

そんなことを思い出させてくれた、70年ほど前の女性編集者のつぶやきっぽい「あとがき」。その思いが、戦後の混乱や貧困や絶望のなかで、ひとつの灯火となって、人々を明るく照らしました。そして、今の社会に生きる人々をも、明るさを失わず、照らし続けているわけなのです。

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