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才能はうらやましくない!?


「ノー!力」よりは、「イエス!力」。

絶対音感のお話。

音を聴くと、音程がわかるというすごい能力ですね。グラスをぴーんと指で弾くと、「あ、それ、ミ!!」なんて言う訳です。ピアノを聞いていて、楽譜をパパパと書き取ったりすることもあります。脳のなかにチューニングメーターが入っているようなもので、音楽の才能のなかでも、「羨望の的SSクラス」にランクされるものです。

ところが。

あるテレビ番組で、絶対音感を持つ、バイオリン演奏家のSさんが話をしていました。もう15年くらい前でしょうか。カラヤン指揮のベルリンフィルにソリストとして招かれた時のエピソードです。

練習の前に、オーケストラ全員が、全員で、チューニングを合わせます。カラヤンがそれをチエックします。当然、Sさんは絶対音感を持っていますから、チューニングは狂いません。ところがです、Aの音(ラ音)で合わせたと思いますが、「あれあれ、ワタシの音だけはずれてる!」と驚愕したそうです。なぜなのでしょうか。

それは、カラヤンがチューニングをわずかに上げることを、フィルのメンバーには要求していたからなのです。つまり、音程とは周波数ですから、A音であっても幅があり、カラヤンは周波数帯域のまんなかではなく、わずかに上で音を合わせていたのです。カラヤンのサウンドの秘密はまさに、このチューニングをほんのちょっとだけ上で合わせることによる、音の緊迫感、テンションの高さにあったのです。「ああ、そうだったんだ!」とSさんはそのカラヤンの秘密を現場でリアルに感じながら、自分だけが微妙に音程がずれていることを感じたのです。オーケストラの全員が出している音の渦のなかで、自分だけが「狂っている」ことに衝撃を受けたのです。生理的な、本能的な衝撃です。しかも、絶対音感が邪魔して、なかなかベルリンフィルのチューニングに合わせようと思っても、体が脳が拒否してできない、のです。

そのとき、Sさんはこう思ったそうです。「絶対音感なんか持って生まれてくるんじゃなかった!!」と。

僕がこの話を最近になってふと思い出したのは、SNSなどで他人(ともだち)の「成果」「トピックス」が次々に並んでいるのを見ると、「自分には特別なことはなにもないなぁ・」と軽い落ち込み状態になる人が増えていると聞いたからでした。

でもね、才能があることと幸せになることはイコールじゃないし、すごい能力の人でもすごい挫折を感じることはあるわけだし、ようーは、使い方だし、言い換えると、生き方だと思うのです。そう、生き方は、自分の能力よりは意思で動かしてゆける。ここが、素晴らしい私たちの能力なのではないでしょうか。

絶対音感が音痴の原因になったというお話でした。ま、他人をあまりうらやましがらずに、今日も自分らしさの範囲で一生懸命いきましょう。ことば℃でした。


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