雑誌は美しい


文明は進歩を目指し、文化は永遠を目指す。

ちょっと前に、神田の古本街をぶらぶらとしていたら、雑誌専門の古書店に巡り会いました。60年代70年代の、雑誌が華やかなりし頃の古書たちです。そこの2階に資生堂の「花椿」が年代順に置かれていました。保存状態のいいものから悪いものまででしたが、そんな状態はさておき、パッと見て衝撃を受けました。それは何でしょうか?

それは、です。「古くなっていない!!」という衝撃。ごらんの「花椿」は、その時、購入した何冊かの一冊ですが、どうでしょう。1969年発売。大阪万博の1年前。ウッドストック・コンサートの年。ミニスカートとカラフルなファッションが新芽のように溢れ出した年。46年も前だぁ!!

デザインや印刷に詳しい人ならわかると思いますが、写植・版下・製版の、今は伝統工芸に属する手法・テクノロジーでこしらえたクリエイションです。デジタル・テクノロジーとは違う、職人芸の世界ですね。テクノロジーは蒸気機関車と新幹線くらい違うのに、人に与えるコミュニケーション鮮度はそんなに変わりません。ある若者に見せたら、「いやいや、この頃のほうが新しいですよ、メチャメチャ」。ま、その若者はややアナログ大好き系ではありますが、ふむふむ、素直な視線で見れば、確かにそうかもしれない、、、なのです。

蒸気機関車から新幹線へ、は、文明です。そこには進化のベクトルがあります。文明は人々に便利さと公平さをもたらします。素晴らしいことですね。限られた人でなく数多くの人に、不便を味あわない体験を与えつつ、社会のインフラをよりよくしてゆくのが、文明です。文明には、必然的に民主主義的価値観が入ります。すべての人のため、を目指す、テクノロジー発想と言えます。

文化(カルチャー)は、「すべての人から」とは考えません。根源には「個人」がいて、その発想やアイデアや美意識がブレイクスルーし、社会に広まってゆくものです。

もちろん、テクノロジーは不要ではありません。広まってゆく過程に存在したりします。60年代、マリー・クワントが発想したのがミニスカート、キュートに見せたのがツイッギーというモデル(個人)、そして、広めたのがテレビメディアというテクノロジー。

しかし、出発点は、こんなのつくったら、面白いかも!と感ずることから、です。極端な話、民主主義で数多くの人が、あーだこーだ言って、生み出されるものではありません。しかし、その個人的発想や創造性は、人々の個人的感受性のフィルターを通って浸透し、拡散してゆきます。便利さではなく、もっと人間の奥深いところに、火を灯すのです。いわば、個人から個人へと共感してゆくのが、文化であり、それが永遠の価値を生み出します。だから、太古の洞窟壁画アルタミラに今だかって、新鮮な感動を覚えるのです。

「花椿」は、当時からあまり売れた雑誌ではないそうです。ただ広報誌として、美容院や化粧品売り場などに常時置かれ、女性の心の奥深いところに、火を灯していったのです。「花椿」を見て、私は東京に行って美大に入りたい、と思ったんですよ、と語る熟女もいました。人生を変えたんですね。

もうひとつ、この「花椿」を介して、女性に美の「永遠」を魅せ、共に考えてゆこうとしている資生堂は、すごい文化的企業だと思います。普通の企業なら、売れないからといって、止めてしまったでしょう。今、売れる売れないの判断だけで、多くの出版物が市場から消えてゆこうとしています。仕方がないと思いつつ、残念なことであり、作り手・売り手・買い手がより成熟してゆかなければ、本はどんどん消費材に近づいてゆくような気がしてなりません。


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